カオリさんはこだわりのブランドから厳選したベビー洋品店を経営しています。品揃えは多くないのですが、お店を気に入ってくれてリピーターになってくれるお客様が一定数います。ただお店のある通りは人通りが少ないので、もっとたくさん人が訪れる立地のところに移転したいと考えています。お金に糸目をつけないとしたらどこに引っ越すでしょうか。青山や銀座あたりでしょうか。いくら人通りが多いからといって、歌舞伎町や上野のアメ横にセレクトショップを移転したいとはあまり思わないでしょう。お店を訪れる人はそれまでよりも増えるかもしれませんが、服を買ってくれる人は多くなさそうです。それよりも、買いもしない客からあれこれ質問を受けて接客に時間を取られてしまい、お店がうまくまわらなくなってしまうことのほうが問題になりそうです。
現実世界ではこうなることがなんとなくわかりそうなのに、ネットでは同じことをやってしまうことがあります。とにかく1アクセスでもアクセス数を増やしたいと考えてしまうのです。現実と違いネットではお店に来てくれているお客様の顔が直接見えませんから、目に見える数字だけを頼ってしまいがちです。アクセスを増やすには検索で上位に表示されることが欠かせませんから、どうにかしてGoogle検索の順位をあげたいと思ってSEOというものにたどり着きます。なのでうちでも、SEOをやって順位を上げたいという相談は本当によく受けます。ありがちな勘違いとして、SEOをやる→検索で順位があがる→アクセスが増える→売り上げがあがる→幸せになる、と単純に考えてしまいますが、実際はそうではありません。SEOをやっても必ず順位が上がるわけではないし、順位があがっても必ずアクセスが増えるわけでもない。そしてやっとアクセスが増えたと思っても、売り上げが上がるわけではありません。今回はその部分の話をします。
弊社ではお客様のホームページを預かっていますから、お客様のサイトのアクセス数やGoogleからどんなキーワードで検索されているかを日々計測しています。ときどき、「Googleからのアクセスは多いけどフォームへの申し込みがぜんぜん増えない」という声を聞くことまります。SEOはうまくいっているのに、売り上げにつながっていないというわけです。これは、ある特定の記事がGoogleで高い評価を得てアクセスを伸ばしているが、実際その記事を見ているのが顧客になる層ではない場合によく起こります。
今のSEOはコンテンツが最も重要だとよくいわれます。検索の順位を決めるAIが進化して賢くなったので、それまでのようにSEO目的の恣意的なリンクやキーワード埋め込みなどの小細工が通用しなくてなり、本当にユーザーにとって質の高いコンテンツが評価されるようになったというわけです。
では、Googleのいうユーザーとは誰のことなのでしょうか。これはとても重要なことです。ある人には質の高いコンテンツであったとしても、別の人から見たらくだらないと思う内容かもしれません。わたしは、今のGoogle検索におけるユーザーとはいわば「大衆」だと思っています。なぜならGoogleのAIはGoogleを利用するすべての人の属性や行動を元にして評価を決めているからです。つまり「みんなが良いと思うものは良い」ということになり、他の人と違った嗜好や行動は大抵の場合、埋もれてしまいます。なので今Googleの検索順位を上げようと思ったら、そのキーワードで誰が見てもこれだよねと感じるような、「ど定番」といえるサイトを作るしかありません。だから例えば鎌倉を観光しようと思って検索しても、出てくるのは観光協会のオフィシャルサイトか、「【**年決定版】鎌倉観光おすすめのスポット20選」みたいなサイトばかりで、個人の尖った意見を反映したようなサイトを見ることはありません。
だからSEOをがんばるということは、訪れた人全員に気に入ってもらえるようなコンテンツを作るということであって、10%の人しか気に入らないコンテンツでは、よほど共感するものであっても成立しません。つまり今SEOがうまくいっていてアクセス数がうなぎのぼりの場合、おめでとうございます。それはあなたのコンテンツがそのキーワードにおける「大衆」からの支持を得ていることを意味します。さてその「大衆」は本当にあなたの顧客でしょうか。
カオリさんはお店を移転するのをやめて、育児に関するブログを書き始めました。そのうちある離乳食についての記事がバズって検索でも上位に表示されるようになりました。我が子の離乳食に悩んでいる日本中のお母さんがカオリさんのサイトにアクセスしました。これはお店の売り上げに大きく貢献するでしょうか。ゼロではないかもしれませんが、ほとんど影響はなさそうです。子供に離乳食を食べさせたいお母さんは大勢いても、セレクトショップの高価なベビー服を着せたいお母さんはずっと少ないうえに、動機が直結しないからです。これがアトピーに関する記事だったら、肌に優しいベビー服を提案することで動機が直結するのでいくらかの効果が期待できるかもしれませんが、いずれにせよ、Googleはあなたのお店に合う顧客を選んではくれません。たいして効果がなくてもゼロよりはいいじゃない。それはそのとおりですが、そのために高いコストを払っているのであれば話は別です。
うちはSEOで売り上げがあがっているよという方もいるでしょう。それはそのキーワードで検索する「大衆」が顧客であるからです。たとえば先ほどの「鎌倉 観光」で検索する場合を考えます。このキーワードでは、検索した人に、鎌倉で観光がしたい意図があるのは明らかです。鎌倉で観光がしたい「大衆」が顧客であるならば、このキーワードでのSEOは有効です。ちなみに現在「鎌倉 観光」で検索すると、大手の旅行サイトが最上位に表示されます。
つまりSEOがうまくいくには、「大衆」を満足させられるかどうかがひとつの鍵になります。これは実は小さい事業や新しい事業にとっては大きな問題です。小さい事業や新しい事業には、自分たちの商品で満足させられる「大衆」が存在しないか、非常に限られていることが多いからです。そういう場合はSEOにこだわるよりも、指名検索を意識したほうがうまくいくように思います。指名検索とは、お店や商品の名前での検索のことです。うちでいえば、「クローバ」「クローバ PAGE」が指名検索です。当たり前ですが、指名検索で検索するということはその商品のことをすでに知っていて興味を持っているということなので、指名検索が売り上げにつながる割合はとても多いのです。なのでお店やサービス名で検索上位を取ることだけはどうしてもこだわってほしいと思います。指名検索を増やすにはSNSを活用して興味を持ってくれそうな人に情報発信をするなど、SEOとは違った工夫が求められます。
検索からのアクセスは増えたけどいまいち効果が出ているのかわからないという方は、Google Search Consoleでどんなキーワードからのアクセスが多いかを一度チェックしてみることをおすすめします。そのうえで今やっているSEOが適切かを判断してみてはいかがでしょうか。
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