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あの会社の営業部長が副業で登録者数5万人のYouTuberになったわけ

あの会社の営業部長が副業で登録者数5万人のYouTuberになったわけ
みなさんは副業と聞くとどんなイメージを思い浮かべますか? 本業で培ったノウハウを活かしてコンサルをやっている人とか、趣味で始めたブログが人気になって、ちょっとしたお金が稼げるようになった人の話はちょいちょい聞きます。勝沢さんは副業でテニスに特化したYouTubeチャンネル「テニスの拳」を運営されています。YouTubeの検索ランキングで「テニス」で一位になるほどの人気チャンネルです。チャンネル登録者数は現在5万8千人。月間再生は100万回を超えることもあるとのこと。でも勝沢さんはテニスをやったことがないのだそうです。

今日はよろしくお願いします。ええとまず確認ですが、本当に本業のことも書いちゃって構わないんですよね?

ぜんぜん問題ないです(笑)。週5日、平日はサイボウズ株式会社で営業の仕事をしています。今は現場ではなくて、マネージメントの業務が主になります。副業で夜の空いた時間や土日を使って、テニスに特化したYouTubeチャンネルを運営しています。始めて3年8ヶ月ほど経ちますね。

もともとは、大学でテニスのトップ選手だった後輩を誘って、彼のキャラを押し出した動画チャンネルを運営してみたらどうかなということで始めたんですが、途中で彼がYouTubeを引退してしまいました。辞めようかどうしようか悩みましたが、引き続き選手やテニスシーンを取り上げていくことにしました。ひとりになってからもう2年くらいですね。撮影、編集、企画、営業やプレゼントの発送も全部自分でやっています。オンラインで動画を配信しているのと、コロナになってからは人数制限したりもしていますが、テニスプレイヤーの方にコーチをしてもらって、リアルなイベントを開催したりもしています。いずれも自分の中では副業かつ自分の手に届く範囲でやっている状況です。

勝沢さんが運営するYouTubeチャンネル「テニスの拳」。チャンネル登録者数は5万人を超える。


勝沢さんはテニスをやったことがないというのは本当なんですか?

まったくやったことがないです。今も。

今も?

この活動をやってから何度かボールを打ったことはあるんですけど、ぜんぜんうまくいかなくて(笑)。たくさんテニス用品はいただけますし、テニスプレイヤーにいくらでも教えてもらえる環境なんですけど(笑)。あくまでもそこは割り切って、撮る、作るというところに。

いきなり核心に迫る質問なんですが、最初から副業でお金稼ごうと思ったら、他のことやるんじゃないかなって思ってしまうんです。収入を得ようという気持ちは最初からあったんですか?

はい、これは最初から副業で収益をあげようと思って始めたものです。当時はそうはいってもまだYouTubeチャンネルを持つことも珍しかったんですよ。趣味とか得意なことを動画にして、すごく人気が出ている人がちらほら出始めている状態だったので。ただ、自分の中で撤退ゾーンは持っていて。しばらくやってダメだったらやめてもいいよねっていうくらいの気持ちで始めました。

他の副業の候補もあったわけですか?

ありましたね。自分自身がプロ野球選手を目指していた時期があるのと、人事部でキャリア形成を業務としてやっていたこともあったので、アスリートのキャリア形成を副業にするのもありかなと思っていました。それはもうネットでとか動画でとかじゃなくて、会って話をするとか、就活のサポートをするアドバイザーみたいな。それはやったらできるんだろうなっていう気持ちもあったんですけど、自分の視野を出てない気がして。動画の編集もやったことがなかったし、テニスのルールも知らなかったんですけど(笑)。ただ、野球のYouTubeで成功する人の例を近くで見ていたので、テニスの競技人口がこれくらいあって、ビジネスだったり文化になっていることを考えると、ある程度いけるだろうっていう勝算はありました。

勝沢さんは就職する前はプロ野球独立リーグの選手だったんですよね。スポーツに関わるというところへのこだわりはありましたか?

最初はその視点しかなかったですね。それまでスポーツをやってきて、自分が理解できる人たちと仕事するのがいいかなと思ったので。これもしかしたら、今だったらYouTubeをやるとしてもスポーツは選ばないかもしれないですね。

それは何か変わってきたんでしょうか。

動画を配信していくうちに、スポーツ以外でも大きな喜びや人々の心を動かす何かの存在に気付かされるようになりました。動画の可能性ってまだすごくあるなって思ってるんですけど、ずっとスポーツのジャンルだけやるというのはまた自分の視野を狭めているんじゃないかなって。最近はウェディングやスイーツの動画なんかにもチャレンジしています。

それは面白いですね。自分の得意な分野に絞って始めたものが、動画編集や動画配信のスキルが上がることによって他の分野にも横展開できるようになったわけですね。

そうです。逆にスポーツは少しスコープというか、ターゲットが小さいかなと思うようになりました。「テニスの拳」はテニスという分野ではYouTubeでもトップクラスのチャンネルですけど、副業のレベルでは限界があると感じています。そこをがんばるよりも、「テニスの拳」で得た経験を他の分野に展開したほうが、もっと届けられる幅が広がると考えています。

「テニスの拳」についてもう少し聞かせてください。YouTuberというと「ハイ〜**です」みたいなキャラ立ちをメインにしたものが主流だと思っていたのですが、「テニスの拳」は全くそれがないですよね?

もともとは一緒にやっていた後輩のキャラクターがすごく人気になって、いわゆる「ユーチューバー」という形でうまくいっていたんですよね。だけど彼が引退して、いなくなったものは仕方がないので、選手やテニスに関わる誰かを毎回取り上げるっていうスタイルに変えました。

それはプラスとマイナス両面ありましたか?

急にテニスもやったことがない何者でもない私が、実はディレクションしてましたって出てきたので、そこはしんどかったですね。一時期はチャンネル登録も減りましたし。ただ、メインキャラクターを通じてでしか伝えられなかった以外のテーマも伝えることができるようになりました。すごく教えるのがうまいコーチや日本トップクラスのプロ選手にも出演してもらえるようになりました。あとはキャラを通さないことで、よりフラットな形で表現できるようになりましたね。色がなくて面白くないと書かれたこともありますけど、いないもんはしょうがないですもんね(笑)。キャラクターがいたほうが、プロデュースしてるなっていう感じはあるんですけど、今は作った動画がヒットしたな、って(笑)。もともとプロ選手とのコネクションはまったくなかったので、自分でネットワークを作りにいってました。具体的には自分でDMを送ったり、テニスのイベントやテニス練習会に参加したりして。以前は企画を説明するのが大変だったんですが、今は相手もYouTubeで知ってくれているので交渉はしやすくなりましたね。


プロ選手とのトークライブの様子


キャラクター頼みだったものが、それがいなくなることで、よりコンテンツを洗練させる必要に迫られたわけですね。

そうです。そのおかげでキャラクターに依存しない、総合的なプロデュース力は以前よりも身につきました。

まさにピンチがチャンスになったと。収益的には変化があったりするんでしょうか

これまた面白くて、広告収益でいうと、最初始めてからどんどん上がっていったんですよ。頑張って動画を作って、撮影にも行って一生懸命走っている状態で、いわば最高潮の時に後輩が抜けてしまったんです。やめたときはやっぱり収益が下がりました。ああこれ面白くない動画作っちゃったなって自分で悩むこともあったんですけど、その数カ月後に、前のチャンネルを超えるヒット作が何本か出たんですよ。なので最高益を達成したのは一人になってからなんですよね。土日の副業としては十分な収入を得られていると思います。

副業の配分を増やそうとは思わないのですか?

それは、会社でも求められている役割があるので思っていないですね。むしろ、YouTuberとしての副業の配分を減らそうと思ってまして、さっき言った横展開の話とか、イベント企画や運営などにも力を入れていきたいと考えています。あとは選手のスポンサードとか。

今YouTuberはレッドオーシャンだといわれていますか、そう感じることはありますか?

最近はテニスの分野でも、動画やコンテンツ制作のプロが参入してきました。そういう人たちに動画の本数やクオリティで勝つのは難しいです。それに太刀打ちしていきたいわけでもない。だから視聴回数だけで収益を得るのではなくて、コンテンツにスポンサードしてもらえる仕組みに変えようと思っています。実際にエキシビジョンマッチを自分のチャンネルで開催して、そこにスポンサーをつけるというのをいくつかやりました。どうすれば持続可能性が高くなるかを考えているところです。

今YouTuberになりたい人がいたとして、ノウハウを教えるとしたらどんなことを伝えます?

まずテーマ設定が大事だと思っていて、見たくなるテーマ、固定的なファンがたくさんいるテーマを選ぶというところですね。そのうえで、ある程度覚悟をもってやっていくことができたら、今って視聴自体は増えていると思うので、そんなに失敗しないんじゃないかと。あんまりニッチな誰も見たくない動画を作ってしまうと、苦労だけするみたいなことになると思いますけど。ある程度この辺りは成功パターンがあって再現できるものなので、始めたい人に教えることもできますので強調しておいてください。

わかりました(笑)。コンテンツを磨くのはもちろん大事と思うのですが、マーケティングというか、集客のコツみたいなものはありますか?

最初はよりリアルなところから広げていくのがいいと思っています。ネットで広くやるよりも、最初30人集めるんだったら、先輩後輩、友達に対して集客かけたほうがいいと思うんですよ。恥ずかしさやプライドとかあるかもしれないですけど。ネットの世界で全く知られていない状態で、ネットのみで繋がろうとしても検索に引っかからない限り難しいですから。だけど、その先スケールしていくためにはネットのパワーが必要で、どのタイミングでネットにいったほうがいいのかは意識したほうがいいです。イベントもリピーターを作ればそこから一定数の集客が見込めると思うので、顔が見える関係づくりの先、ネットとリアルのバランスで集客していくのが大事かなと。

ネットでの集客というとTwitterなどのSNSも効果がありますか?

Twitterのフォロワーを増やしたいならTwitterをやるのがいいと思うんですけど、YouTubeの登録者数を増やしたいなら、これはYouTube上にものすごく面白い動画を上げるのが一番の集客の近道です。少しでも長く見てもらうことでチャンネル登録もしてもらえるし、シェアもしてもらいやすくなるので。これ見てもらうとわかるんですけど(YouTubeのアクセス解析画面を見せて)、YouTubeの外から来た人に動画が視聴されることってほとんどないんですよ。動画の中でプレゼントがもらえるキャンペーンみたいなもやったことあるんですけど、あれはもともとチャンネル登録している人が視聴して応募するだけで、登録者を増やすという意味では効果がなかったのでやめました。

ありがとうございました。最後に、これから何か新しいことを始める人にメッセージをお願いします。

私自身、副業でYouTuberを4年近くやってきて、いろいろ苦労もあったんですけど、試行錯誤していく中で、それまでまったく未経験だった動画の編集や、プロデュースを通じて新しい視野が得られたと思っています。今後はこうした経験を活かして、副業したり自分でビジネスしたい人の力になれればと思います。