最近はインターネットに簡単に広告を出せるようになりました。インターネット広告というとグーグルの検索広告が有名ですが、ツイッターやフェイスブックでも数百円から広告が出せるので、個人事業で広告を運用されている方も多いかと思います。小売や飲食などではだいたいこれくらい広告費にかければいいみたいな情報がネットに書かれてありますが、教室やウェブサービスなどのように、継続してお客様から対価をいただく小規模な事業について、広告とどう付き合えばよいか考えてみたいと思います。
以前、SNS運用は基本的に既存顧客のためのもの、という話を書きました。なぜかというと、企業やお店、コミュニティのアカウントというのはそこに興味がある人や既存のファンしかフォローしないからです。じゃあそうでない人にも自分たちのことを知ってもらうにはということで、広告を出してみようかなとなります。
ここで最初に悩むのは、どれくらい広告にお金をかければよいのだろうということではないかと思います。マーケティングの経験がないと広告さえ出せばたくさんの人に見てもらえると過度な期待を抱きがちです。わたしがまさにそれでした。3秒しか見てくれないウェブサイトのために毎日情け容赦なく広告費が消費されていくのを見るのは辛いものです。お金に余裕があるからいきなりうん十万円広告を出してみようかなという方もいるかもしれませんが、これはおすすめできません。その理由は、最初から効果的な広告を出すのはとても難しいからです。ただ闇雲に広告を出しただけでは、結構なお金使ったけどあんまり意味なかったな、となる可能性が高いです。しかも小さい事業では、大企業のようにそう何度も高いお金をかけて広告を出すことができません。何度も試行錯誤しながら、効果がある程度予測できるようになって初めて、広告を出すメリットが得られるようになるのですが、最初からたくさんお金をかけてしまうと効果が得られないうちに予算がつきてしまいます。なので最初は検証のためと割り切って、少ない費用で始めるのがよいでしょう。
広告で思ったような成果が得られなかった、というのはよくある話ですが、「思ったような成果」というのはどれくらいなのかと聞かれても、論理的に答えられる人は少ないのではないかと思います。例えばECサイトで1万円の商品を販売していて、多くの顧客がその商品を一回しか買わないケースであれば、10万円の広告を出して商品が10個しか売れなかったとしたら、単純に原価分のマイナスになるので広告を出せば出すほど赤字だということがわかります。継続してお金をいただくビジネスの場合はどうでしょう。例えば月謝5千円の陶芸教室をやっているとして、10万円の広告を出したとしたら、どれくらいの人が入会してくれるのが「思ったような成果」になるでしょうか。
これを考えるためには、まず「お客様が一人増えると、トータルでどれくらいの売り上げをもたらしてくれるか」を知る必要があります。これを顧客生涯価値(LTV)と言います。先ほどの陶芸教室でしたら、平均して一人の生徒が3年通ってくれるとしたら、顧客生涯価値は5千円 × 36ヶ月で18万円となります。逆にいえば、顧客生涯価値がわかっていないと広告の効果を正確に測ることができません。つまり始めたばかりの教室でどれくらい続けてくれるかわからないうちから広告をたくさんうつのはリスクが高い、ということです。
次に原価と人件費、利益を考えます。陶芸教室の原価は実はよく知りませんが、ざっくり20%とします。業種によってはもっと多かったり、少なかったりするでしょう。人件費については、顧客ひとりあたりの費用なので少人数を相手にする場合は割合が大きくなりますが、仮に40%としましょう。利益は固定で10%とします。
そうすると18万円から、原価の20%と人件費40%、利益10%を差し引いた残りの30%、
18万円 × 30% = 5万4千円
が一人の顧客を獲得するのに使ってもいいコスト(CACと呼ばれます)、ということになります。実際は原価が高い業種だと10%以下というのもあり得ますし、人件費の割合によっても変わってきます。ウェブサービスでは一般的に顧客生涯価値の3分の1(33%)の金額で顧客を獲得するのが理想、といわれています(LTV > 3 × CACなどと書かれます)。比率が高くなると利益を出すのが難しくなるので最大でも40%におさめないと厳しいと思います。
従ってこの例だと、ひとりのお客様に入会してもらうのに、5万4千円までは広告費に使っても問題ないことがわかります。けっこう多いなと思ったのではないでしょうか。なので10万円の広告を出してふたり入会したのであれば、思ったような成果がなかったというよりもむしろ好ましい成果として捉えることができます。ひとりしか入会してくれなかったのであれば、やりかたを見直す必要があります。広告の文章や動画をもっと工夫しないといけないかもしれないし、より入会しやすいようホームページを改善しないといけないかもしれません。5万4千円でひとりってけっこう余裕かも、と思われたかもしれませんが、広告でこの基準をクリアするのは実は簡単ではありません。特にこのブログではお客様と長いお付き合いをする前提で書いているので、そういう新規のお客様を開拓するためには何度も広告を出稿して効果を検証し、改善していく必要があります。
これまでに書いたように、広告を出した金額に見合うものにするには、
が重要になります。LTVは顧客の入退会記録をつけていれば、過去にどれくらいお客様が継続しているかがわかりますが、CACの方はアクセス解析などからデータを計測する必要があります。クローバ PAGE を使う場合はGoogle Analyticsと連携してフォームからの申し込みを計測することができます。
最後に、どんな広告を出せばいいかについてですが、現在インターネット上の広告はなかなかクリックしてもらえない傾向があります。特に「新製品今だけXX万円」みたいなあからさまな広告はもう誰も目にとめてもらえません。「見てもらえないから広告を出そう」ではなく、お客様に喜んでもらえる自信のあるコンテンツに対してこそ広告を出すべきで、そうすることでより多くの人に届けられる機会が得られるはずです。