最近はなんでもスマホとネットでできるようになったので、新しく通販をやろうかなとか、こういうサービスを提供してみたいと思ったときに、まずネットでやってみようと考えるのは自然なことです。あなたが盆栽愛好家のためのSNS「ボンサイズドットコム」をどうしても立ち上げたいとします。幸いなことにクラウドファンディングで仲間たちから300万円の資金が集まりました。よそはきれいなホームページを持ってるからうちも作らなきゃ。これはまあいいでしょう。システムの開発はどうしたらいいでしょうか。SNSで知り合った友達に自分の盆栽をシェアできる機能が欲しい。スマホでフリマアプリみたいに販売もできたらいいんじゃない。そんな感じで夢が膨らみます。あいにくあなたのチームにはプログラミングができる人がいないので、開発を誰かに委託する必要があります。ホームページに50万円かかったけれど、あと250万円は余裕があります。知り合いにシステム開発会社の担当者を紹介してもらいました。さっそくやりたいことを口頭で伝えて、見積もりをしてもらいます。はい、一千万円。しかもスマホのアプリを開発するにはさらに一千万かかるといわれます。はあ? システムってホームページに毛が生えたようなもんでしょ? 見た目ほとんど変わらないし。仕方がないので、あなたは最低限の機能だけを250万円で作ってもらうことにしました。ユーザー登録して、盆栽の写真をアップロードできる。フォローした他のユーザーの写真を見ることができる。それだけです。出来上がったものは画面のデザインがいまいちだったけど、どうにかボンサイズドットコムを立ち上げることができそうなところまでこぎつけました。この時あなたは重大なことに気がつきます。パソコンでは問題なかったのですが、スマホで見ると画面の文字が小さすぎてとても使えません。担当者に伝えると、スマホで使えるようにという指示はなかった。対応するにはあと2ヶ月かかるし追加費用も必要だといわれます。あなたはなんとかお願いして追加費用をまけてもらい、ひと月後にサービス開始にこぎつけました。運用してみると、それまで気がつかなかった不具合がたくさんあることがわかりましたが、保守費用を払う余裕がありません。最初は渋々対応してくれた担当者ともついに連絡が取れなくなってしましました。もともと大した機能もないので、利用者も増えません。ある時システムが原因不明の不具合で停止して、途方にくれたあなたはボンサイズドットコムを閉じるしかなくなったのでした。
こういう話は実際にたまに聞きます。多くはITの知識や経験のない方が、一からウェブサービスのシステムを開発しようとして失敗してしまうパターンです。システムの開発は想像よりもとても費用がかかります。当たり前にできると思われがちなセキュリティ対策やスマホ対応にもそれなりの費用がかかります。しかも開発して運用を開始したらそれで終わりではなく、継続してお金がかかるものです。システムを一から開発するには、次のいずれかの条件を満たしていなければなりません。
さらに、お金を払って開発を委託するには、十分なお金があったとしてもリスクが高いです。なぜかというと、システム開発会社というのは一般的に、大企業のシステム部門を顧客としてビジネスをしています。そうなると必然的に単価は高くなりがちで、しかも顧客側の担当者もITのことがわかっていますから、ある程度最初から共通の理解があります。開発会社としてはそれに慣れてしまっているので、全く知識のない顧客にログインとは何かみたいなことを一から説明するのはとても面倒くさいですし、共通理解がないせいで言った言わないみたいなことになって余計な作業が発生するのは避けたいのです。なので最初からリスクを考慮して見積もりを多めに出されることもありますし、最初から相手にされないこともあります。うちでも初めてでやりとりに時間がかかりそうなお客様には多めの見積もりを出します。それからシステムの開発というものは、開発を担当するプログラマーの力量に大きく影響されます。プログラマーって決まったことをするだけでしょと思われるかもしれませんがそんなことはなく、特に少人数の開発であればあるほど、生産性、品質ともに雲泥の差が出てきます。委託すると誰が担当するかは運でしかないので、この点からもリスクがあるといえるでしょう。なので本当は開発を委託するのであればお金があるだけでは十分でなく、きちんと開発会社のマネージメントができるという点が重要になります。個人や少人数でのサービス立ち上げで委託による開発が難しいのはこのためなのです。なので自分で開発ができないのであれば、何としてでもエンジニアを仲間に入れることをまず考えてみてください。
システムの開発というのは手段であって、やりたいことそのものではないはずです。盆栽愛好家が交流できる場を作りたいのならFacebookでいいですし、クローバ PAGEで会員サイトを作ることもできます。決済がやりたければShopifyなどのクラウドサービスがあります。顧客管理システムが作りたければkintoneでできるかもしれません。今は用途ごとにクラウドサービスがたくさんあります。もしそういったサービスがうまく使えるのであれば費用は100分の1で済みますから使わない手はありません。注意して欲しいのは、システム開発会社に相談してもおそらくお勧めのクラウドサービスを教えてくれたりはしません。彼らは顧客に安いクラウドサービスを使われるよりも、一から作ってもらったほうが儲かるからです。そしてあまり詳しくもありません。
では誰に相談すればいいか。まずは誰でもいいので、近くで起業した人やフリーランスの人を探してください。なるべく若い人がいいです。そういう人はいろんなクラウドサービスを自分で使ったり情報を得たりしているはずなので、自分はこういうことがやりたいのだけど使えそうなサービスはないかと聞いてみてください。中小企業のサービス紹介サイトやNPO支援サービスの紹介サイトを利用するのも良いでしょう。情報が集まったら、まずは用途に合いそうなものか自分で調べてみてください。大抵は無料でお試しができるはずなので、実際に試してみて良さそうなら、そのサービスの利用者が集まるイベントに参加します。ちょっと敷居が高いかもしれませんがお金はかからないのでそこは勇気を持って参加しましょう。そういうイベントに来ている詳しそうな方に、こういうことがやりたいんだが可能か、または開発の相談ができないか尋ねてみれば、きっと温かく相談に乗ってくれると思います。なぜならこういう人たちはそのサービス周辺でビジネスをやっているので、サービスの利用者が広がると嬉しいからです。
わたしはソフトウェアの開発に20年以上携わってきました。昔は大企業しか持てなかったシステムよりもずっと機能が多くて性能も良いものが、今は小さい事業や個人事業でもクラウドサービスを使えば利用できるようになりました。うまく利用して事業に活用してみてください。