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蒲田カルチャートークさんにイベント運営と集客の「今」について聞いてみた<前編>

蒲田カルチャートークさんにイベント運営と集客の「今」について聞いてみた<前編>
お笑い芸人から「パンケーキ食べたい。蒲田は地獄」なんてネタにされてしまう町があります。今回は蒲田からディープな文化を世の中に発信する「蒲田カルチャートーク」(通称かまカル)の主催者である原 孝寿さんにお話をお聞きしました。原さんは大手出版社の現役編集者であり、クイズの趣味が高じて過去にはテレビのクイズ番組で準レギュラーを務めていたという、ちょっと変わった経歴をお持ちの方です。


「つながり」を軸としたいという思い

原さんはKADOKAWAの現役編集者さんだそうですが、蒲田カルチャートークの活動は副業、ということになるのでしょうか。

今となっては副業になりますね。

それは何か、会社でのお仕事にモヤモヤするものがあって?

はは、いやモヤモヤはあります。僕は書籍の編集、本を作る仕事を20年やってきたんですけど、出版社の仕事は大きな話題を扱うので、どうしても自分の生活とは縁のうすいテーマを扱うことも多くなります。そうした実感の乏しいことを扱っている不安がずっとありまして、いつか自分とつながりのあるテーマを軸とした活動をしたいとは思ってました。

そこで、住んでいらっしゃる蒲田をテーマにしたイベントを開催したわけですか。

新宿や渋谷にトークライブハウスといいまして、トークイベント中心のライブハウスがあるんですね。僕もそういうところでクイズやトークイベントの企画をやっていたんですけど、そういうトークイベントって、東京の南の方ではやってなくて、またローカルな素材をテーマにしたイベントもなかったので、自分でやってみようかと思いました。最初は単発のイベントで、「蒲田餃子ナイト」というのをやりました。蒲田は羽根つき餃子の有名店がたくさんあるので。餃子ジャーナリストや餃子シンガーソングライターも呼んで。

餃子シンガーソングライターですか(笑)。そこからはたくさんイベントをやられてますね。

「銭湯ナイト」「ラーメンナイト」「ミュージックナイト」に「蒲田怪談」居酒屋を借り切っての「蒲田居酒屋ナイト」、工場で働く女性に集まってもらった「工場女子ナイト」なんかもやりました。


蒲田温泉で催された「蒲田銭湯ナイト」。テルマエ・ロマエ作者のヤマザキマリ氏も登壇。

練馬カルチャートークだと成立しない

蒲田温泉の銭湯ナイトはわたしも参加させてもらいました。参加者のみなさんの会話が、あそこの煙突がとかボイラーの交換がとかマニアックすぎて話にはついていけませんでしたが、ディープな世界を楽しませてもらいました。改めて蒲田の魅力を教えてもらえますか?

たとえばこれが練馬だったり、同じ大田区でも大森の名前を冠して「練馬カルチャートーク」だったり「大森カルチャートーク」だったりすると、あんまり成立しなかったと思うんですよ。イベントに必要なエネルギー感が見えてこない。これが蒲田を軸にしようと思いついたときにちょっと見えてきたものがあって・・・蒲田は都内では赤羽とかと並ぶ大きな歓楽街ですし、もともとは松竹蒲田撮影所があった映画の都。工場があってものづくりの文化もある。東京の中ではイメージ悪いところがありますけど、あれは夢屋まさるさんにネタにされたりと濡れ衣の部分もあって。

(笑)

でも芸人がネタにしてしまう、パブリックイメージがあることはむしろ強みですよね。ほとんどの街は笑いの中でネタにもされないんですから。突然、相模原とかをイジる芸人さんはいないわけで、これは圧倒的にアドバンテージがあります。

確かに。

こういうイメージをうまく生かしたのが好例が木更津です。ちょっと冴えない田舎でヤンキー的なところを逆にブランディングしたんですね。

毎年フェスですごい数の人が集まると聞きます。

蒲田もそういう意味ではすごいポテンシャルを持っているのに、それを生かしきれていない。もったいないところがあるんです。だからこそトークライブで盛り上げていく余地があるとも思いました。

蒲田のブランディングというところまで考えていらっしゃるんでしょうか。

もちろんそれは考えます。そこは行政といっしょにというところなんですけど。ただ行政は広報を大手の代理店に委託しているのが現状なんですよね。大手は広告やメディア対応などひととおりのことはやってくれるんですけど、できることが限られていることを発注側も認識しはじめていると思うんです。値段も割合高めで、たしかにメニュー通りのことは実施してくれるんだけど、取り組んだ結果に納得感がでないというような声も聞きます。もっと地域に根ざした企業とか、実際にそこに住んでいるフリーランスとかと組めるようになったほうが、地域にフィットした広報活動ができます。僕自身そういった変化を少しずつ感じていて、これからはじょじょに置き換わっていくのではないかと予想しています。

フリーランスで広報をやってくれる人ってそんなにいるんでしょうか。

メディアの業界から独立して他業種に流れている人材とかが、ローカルな場所に現れはじめています。広報でいちばんネックになるのはメディアとの関係づくりなんですが、彼らは業界で培ったスキルと人脈を持っています。そういう人たちを見つけて活用することで比較的ローコストなPRができます。メディアの中の人には一見本業と関係ないところで活躍している人がけっこういるんですよ。グルメの世界で名が知られている人とか、将棋業界でとか。

そういう方って本業のためにやっているわけではないんですか?

どうだろう。才能があるから二足できちゃうというのもあるかもしれません。僕は器用ではないので意図的にいろいろやってる側面がありますね。

原さんご自身、今は副業ということですけれど、法人化もされていますよね。

イベントに出ていただいた方にはギャラも発生しますし、会計処理しないといけないので法人化しています。芸能事務所なんかは法人でないと取引できないところもありますしね。

怪談と町中華の関係

集客についてお伺いします。蒲田という軸があるとはいえ、これだけいろんな種類のイベントがあると、銭湯に興味がある人がみんな餃子に興味があるわけでもないと思うんですが、集客には苦労しませんか?

もともとどういうお客さんが来るのかわからない、未知のところから開拓していったんですけど、基本は今でもイチから集客することになりますね。なのでSNSで継続的に見てもらえることを重視してます。今ではどんなテーマでも来てくれるコアな蒲田ファンもついてくださるようになりました。

Twitterの運用についてはみなさん興味があると思うので、このあとゆっくり教えてください。

わかりました(笑)。僕はいろんなことに関心があるので、単純に集客だけでイベントを決めてはいないんですけど、人が集まりやすいイベントと集まりにくいものがあって、蒲田カルチャートークで安定して集客できたのは怪談でしたね。怪談は子供世代にもいますごい人気があります。

そうなんですね。

逆に集客面で厳しかったのは町中華のイベントかな。町中華もここ数年ブームでイベントページのいいねとか、シェアはものすごかったんですよ。だけど、テーマに興味はあってお店に食べには行きたい人は多いけど、トークイベントに来たいという人があんまりいなかったんですね。イベントって実際にお客さんに来て体験してもらってはじめて、主催側もいいイベントかどうかわかるものじゃないですか。この企画は小規模化して多少赤字でしたが形にはしました。来た方には神回と喜んでもらえたのですが、「これだけ満足できますよ」って前もって言えないじゃないですか。そこがイベント集客の難しさですね。

後編ではコロナ禍でのイベント運営やSNS運営のコツについてお伺いします。

後編に続きます